「きつい仕事の割に、給料が安いのでは?」
大工という仕事に、そんなイメージをお持ちではないでしょうか。
たしかに、大工の就業者数は1980年の約90万人から2020年には約29万人まで減少しており、担い手不足は深刻な課題です。(※)
しかし、視点を変えれば、これは若手にとって大きなチャンスです。 特に30代以下の担い手が少ない今、技術を身につけた大工は引く手あまたの「売り手市場」。5年、10年先を見据えれば、その価値はさらに高まるでしょう。
この記事では、そんな将来性あふれる大工のリアルな収入事情を、公的な最新データに基づいて徹底解説。「実際いくら稼げるのか?」という疑問にお答えし、年収をアップさせるための具体的な方法までご紹介します。
大工の平均年収は485万円(令和7年)|月収・賞与と3年の推移

厚生労働省が2026年3月に公表した「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、大工(企業規模10人以上・男女計・集計対象19,310人)の給与は、毎月決まって支給される現金給与額が36.0万円、年間の賞与が53.1万円でした。年収に換算すると約485万円です。平均年齢は50.2歳、勤続年数は11年です。
同じ調査の過去3年は令和4年が約451万円、令和5年が約457万円、令和6年が約449万円で、令和7年は前年から約8%上がりました。
また、実際の求人情報をもとに給与データを集計している大手求人情報サイト「求人ボックス」を見ても、大工の平均年収は約488万円(2026年9月時点)と、公的統計とほぼ同じ水準を示しています。日本の給与所得者全体の平均年収と比較しても遜色のない、専門職として十分に安定した収入が得られることを証明しています。

これはあくまで全国・全年齢の平均値であり、いわばキャリアの「スタートライン」とも言える数字です。あなたの収入は、これからご紹介する「年齢」「経験年数」、そして何よりもあなた自身の「スキル」によって、さらに大きく上を目指すことが可能です。
平均より役に立つ「月給の分布」|求人票の数字が相場のどこか
平均年収だけでは、目の前の求人票の月給が高いのか安いのか分かりません。そこで同じ調査から、残業代と賞与を除いた月給(所定内給与)の分布を見てみましょう。
大工の月給は、下から1割の人が22.8万円未満、下から4分の1が26.2万円、ちょうど真ん中(中央値)が32.4万円、上から4分の1が37.3万円、上から1割が42.9万円以上です。最も人数が多いのは40万円台前半の層でした。
求人票に「月給25万円」とあれば下位4分の1、「月給33万円」でちょうど真ん中、「月給37万円以上」なら上位4分の1に入る水準だと読めます。平均の32.7万円と中央値の32.4万円がほぼ同じなので、大工の月給は一部の高額な人に引っ張られておらず、平均をそのまま目安にして構いません。
年齢別平均
大工は、あなたの経験とスキルが収入に反映される仕事です。下の年齢別平均年収のグラフは、その事実を明確に示しています。

20代は350〜380万円台ですが、30代前半で500万円に乗り、35歳から59歳までは530〜630万円の帯で推移します。ピークは55〜59歳の632万円です。60歳を境にいったん380万円まで下がりますが、65歳以上では450万円台に戻り、70歳以上でも3,570人が働いています。年齢区分の中で最も人数が多いのがこの層で、体力と技術が続く限り長く稼げる仕事だと分かります。
年齢が上がるにつれて着実に伸びるというより、30代で一段上がったあとは緩やかに上がり、ベテランの価値が下がらないのが大工の年収の形です。
経験年数別平均
年齢より収入に直結するのが、この仕事での経験年数です。令和7年の調査では、経験0年の大工の年収(所定内給与と賞与から換算)が約283万円、1〜4年で約332万円、5〜9年で約412万円、10〜14年で約498万円でした。未経験から始めて5年で400万円台、10年で500万円に届く計算です。
一方、15年以上は約489万円で、10〜14年とほぼ同じ水準です。経験年数が最も効くのは10年目までで、その先は役職や手当、勤め先の違いが年収を分けます。なお、この数字は残業代を含まない給与から換算しているため、前述の平均485万円とは計算の基準が違います。
未経験の1年目の283万円は全国の平均です。見習いをどう育てるかは会社によって差が大きく、就職先の選び方で最初の数年の伸び方が変わります。
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都道府県別の年収は「母数」を見てから使う
大工の年収は働く地域によって差があると言われ、都道府県別のランキングもよく見かけます。ただし、この数字は使い方に注意が必要です。
令和7年の調査で、集計対象が300人以上いる都道府県を並べると、千葉が約633万円(540人)、東京が約581万円(4,460人)、鹿児島が約514万円(380人)、大阪が約510万円(1,380人)、京都が約508万円(420人)、埼玉が約450万円(7,480人)、兵庫が約449万円(500人)、新潟が約409万円(530人)、岩手が約370万円(1,130人)でした。
注意したいのは母数です。全国の集計対象19,310人のうち、埼玉と東京だけで62%を占め、宮城は10人、群馬は30人、愛知は90人と、数十人の回答で県の平均が決まっている地域も多くあります。こうした県の数字は年によって100万円単位で動くため、首都圏と関西で高い傾向がある程度に押さえ、自分の県の相場は求人票の実額で確かめるのが確実です。
参照|厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査(都道府県、職種別)
求人票の「日給」「月給」から年収を逆算する|大工の3つの働き方

大工の求人票には、月給制のほかに「日給18,000円」のような日給制や、独立した一人親方向けの請負があります。同じ「年収500万円」でも中身が違うので、求人票の数字を年収に直してから比べる必要があります。
日給制は「稼働日数」で年収が決まる
日給制の年収は、日給に月の稼働日数と12を掛けた数字です。日給15,000円で月20日働けば年収360万円、日給18,000円で月22日なら約475万円になります。ここで効いてくるのが稼働日数です。雨天や現場の切れ目で月16日に落ちると、日給18,000円でも年収は約346万円まで下がります。
一人親方労災保険組合がまとめた全建総連の調査(2018年)でも、大工の日給は16,992円で月の労働日数は18.8日、年収に直すと約383万円でした。日給の額が高く見えても、稼働日数が少なければ会社員の平均を下回ります。求人票の日給を見たら、月に何日働けるのか、賞与や社会保険があるのかを必ず確かめてください。
月給制は賞与と残業込みで比べる
公的統計の485万円は、毎月の給与36.0万円の12か月分に賞与53.1万円を足した数字で、毎月の給与には残業代も含まれています。求人票の「月給25万円〜30万円」は、平均並みの賞与を足すと年収350万〜410万円ほどになり、経験1〜4年(約332万円)から5〜9年(約412万円)の統計と重なる帯です。
月給の額だけを見ると差が小さく見えても、賞与の有無で年収は50万円以上変わります。月給と賞与、残業代の扱いを分けて年収に直してから、他の求人や統計と比べるようにしましょう。
一人親方は「売上」と「手取り」を分けて考える
「独立すれば年収1,000万円」という話は、多くの場合が売上の数字です。一人親方は材料費や道具、保険料、税金を自分で払うため、手元に残る額は売上よりかなり小さくなります。先ほどの全建総連の調査では、大工の一人親方の年収は平均で約383万円と、会社員の平均を下回っていました。
もちろん、ハウスメーカーの請負で日当4万円台を稼ぐ人もいます。独立で上がるのは年収の「上限」であって「平均」ではない、と理解したうえで、売上と手取りを分けて計画を立てることが大切です。
大工が年収を上げる方法は?

今の収入に満足していない方も、将来に不安を感じている方も、ご安心ください。大工には、スキルと戦略次第で年収を上げていく道が明確に用意されています。
具体的に大工が年収を上げる方法について、見ていきましょう。
資格を取得して技術力を高める
個人のスキルが重視される世界だからこそ、客観的な技術の証明は強力な武器になります。国家資格である「建築大工技能士」や、現場全体の管理能力を示す「建築施工管理技士」などを取得すれば、技術力の高さを誰にでも示すことができます。社内での昇給・昇進はもちろん、より条件の良い会社への転職の際にも、非常に有利なカードとなるでしょう。
独立して個人事業主として働く
自分の腕に絶対的な自信があるなら、独立して個人事業主(一人親方)になるのも一つの道です。成功すれば、会社員時代の給与の天井はなくなり、年収1000万円を超えることも夢ではありません。ただし、統計上の一人親方の平均は会社員の平均を下回っており、1,000万円は売上ベースで一部の人が到達する数字です(前章参照)。
仕事の受注から材料の手配、経理処理まですべて自分で行う必要があり、福利厚生がなくなる点やインボイス制度への対応など、経営者としての知識も求められます。まずは会社員として人脈と経験を十分に積んでから挑戦するのが、成功への近道です。
待遇の良い職場に就職・転職する
働く企業によって年収や得意分野(木造住宅、商業建築、リフォームなど)は大きく異なります。自分のスキルや経験を最も高く評価してくれる、そして最も活かせる会社に転職するのも、非常に有効な年収アップ戦略です。業界全体が深刻な人手不足にあるため、確かなスキルを持つ人材は、多くの企業が好条件で迎え入れてくれる可能性が高いでしょう。
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まとめ

ここまで見てきたように、大工の平均年収は約485万円(令和7年)。月給の中央値は32.4万円で、平均と中央値がほぼ同じ、つまり一部の人だけが稼いでいる仕事ではありません。年齢と共に経験を積み、スキルを磨くことで、30代で500万円、50代後半で630万円という統計上の帯に乗り、独立や役職でその先を目指せるのが、この仕事の魅力です。
担い手不足が叫ばれる今だからこそ、確かな技術を持つ大工の価値は、かつてないほど高まっています。大工は、ただ家を建てるだけの仕事ではありません。人々の暮らしの基盤を造り、街の風景を創り出す、誇り高いクリエイティブな仕事です。
この記事を読んで少しでも心が動いたなら、それはあなたのキャリアにとって大きな一歩かもしれません。
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